聖心と本女の偏差値は同程度なのに、出身高校を見るとスクール・カラーの差は歴然
ご存知《ぞんじ》、新聞社系週刊誌の売れ行きがグワーンと伸びる時期を迎えております。「大学合格者高校別一覧」なる企画が掲載されているからでございます。「『朝日ジャーナル』とは違って、近頃《ちかごろ》、読み終わるまでに、たったの五分もかからない兄弟雑誌になったねえ」とお嘆きの諸兄も、この企画にだけは、ジーッと注目であります。
もっとも、日頃、「すべての生徒、学生が、生き生きとした眼《め》をして机に向かうことの出来る、格差のない学校教育を」なあんて社説を掲げている本紙への手前、各誌とも「学校のランキング化を助長するわけでは決してない。読者の方々も、その点はわかって下さることと信じる」みたいな編集長のアポロジャイズが載ったりはするわけですが。
ま、それはともかく、こうした「大学合格者高校別一覧」を見ていると、ある種のことに気がつきます。それは、ミッション系女子大と非ミッション系女子大では、それぞれの上位に登場する高校に大きな違いが見られるという点であります。
聖心女子大と日本女子大を例に挙げてみます。聖心女子大とは違って、学科別に募集を行う日本女子大の場合、河合塾《じゆく》の資料によると難易ランク3、偏差値60・0〜62・4の英文学科から、難易ランク8、偏差値47・5〜49・9の家政経済学科に至るまで幅があるのですが、それでも、多くの学科は難易ランク5、偏差値55・0〜57・4の聖心女子大と、ほぼ同じ難易度であります。
まずは、聖心女子大の方から見てみましょう。浦和明の星女子の二四名をトップに、女子学院、光塩女子、田園調布雙葉《ふたば》、横浜雙葉、清泉女学院、雙葉、晃華《こうか》学園とミッション系女子高が続きます。ようやっと、九番目に県立船橋が登場してはいるものの、その後も湘南白百合《しようなんしらゆり》学園、白百合学園、頌栄《しようえい》女子、聖ドミニコ学園、東洋英和、立教女学院といったミッション系女子高の名まえばかりが目につきます。
もちろん、一口にミッション系女子高とはいっても、浦和明の星女子や高円寺にある光塩女子のように地味めな少女の多いところもあれば、四谷の雙葉とは違って制服がトッポいこともあってか、かわいらしく見える子の率が高い田園調布雙葉、同様に制服らしからぬ制服が人気を呼んでいる調布の晃華学園、高輪台の頌栄女子、二子玉川の聖ドミニコ学園と、その雰囲気《ふんいき》は様々ではあります。が、白金三光町の聖心女学院高等科、ワンレングス少女が多い宝塚市の小林《おばやし》聖心、裾野《すその》市にある不二聖心、札幌聖心といった姉妹校からの進学者の数も考えると、圧倒的にミッション系女子高校出身者が多いという事実だけは否定出来ません。
日本女子大の方を見てみましょう。もちろん、こちらも内部進学者がかなりの数いるのですが、七六名の浦和一女をトップに、都立武蔵《むさし》、女子学院、千葉女子、富士、西、川越女子、浦和明の星、青山、国立、戸山。ウーム、ミッション系女子高は二校のみ、で、おまけに、地味な高校名が続きます。件《くだん》の兄弟誌『週刊朝日』によれば、その後に登場する高校も、ミッション系女子高はゼロ。公立の共学校が目につきます。
いや、もちろん、「だからって、何なんだ」と言われれば、「はあ、それだけのことなんですけれどね」と答えるしかないのでしょうが、でも、少なくとも、この違いがそれぞれのスクール・カラーに大きく反映している。このことだけは胸張って言えましょう。
このところ、再びパンチ力が出て来た渡辺プロダクションの美佐女史には二人の娘がおります。母親と同じ日本女子大を下からずうっと上がって卒業しました。が、その交友関係を見ていると、我々が想像していたよりも地味な女の子や男の子が多いことに驚きます。ごくごく普通の家庭の子たちが多いのです。
もちろん、これまた、「じゃあ、聖心へ行ってたら、どういう具合に交友関係が違っていたんだよ」と尋ねられると、「うーんとねえ」、物理や数学ではないものですから、そのイメージの違いを言葉で上手に説明することは困難です。
けれども、たとえば、有栖川宮《ありすがわのみや》記念公園の横にある東京ローンテニスクラブの会員名簿の家族欄を見ていると、妻もその子供も、圧倒的多数が聖心女子学院、聖心女子大の出身、または在学中です。続いて、高校が学習院女子、慶応女子だったというケースが続きます。日本女子大を含めた、その他の学校は、まったくと言っていいほど登場してこないのです。そうして、彼女らの夫や父は、もちろん、大部分が下からずうっと慶応、あるいは学習院です。
早稲田と仲が良いと一般的には思われている日本女子大へ通っていた美佐女史のお嬢さん二人が、もし、ずうっと下から聖心だったら、と僕《ぼく》が述べるのは、こうした点からです。本女では、下からずうっと、という子でも、ごくごく普通のサラリーマン家庭出身者が多いのです。
付属校レベルでのこうした違いの他《ほか》に、大学段階においては、先に述べた大学合格者高校別一覧の違いもプラスされて、ますますオッシャレー度の差が開くこととなります。
そりゃ、そうでしょうに。「頑張《がんば》ってお勉強して、授業料が安い県立浦和一女や都立富士、西へ入りなさい」とお尻《しり》を叩《たた》く家庭の出身者と、「中、高一貫の四谷の雙葉へ入れましょう」、あるいは、「四谷大塚での成績は、女子学院や雙葉へ入れるほど上位ではないけれど、でも、ほら、ミッション系へ入れた方が、なんとなく聞こえもいいじゃない? それで、頌栄女子か聖ドミニコ学園はどうかしら」と妻が夫に相談したような家庭の出身者とでは、そこはかとなく違うものです。
同じ偏差値の大学でも、スクール・カラーが違う。このイメージの違いが、たとえば、慶応の男の子をして、「本女のガールフレンドがいるんだ」と言うのよりも、「一応、聖心にね、いるんだ」と言う方が、胸を張れる、という現象を生んでいるわけです。
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